にちゃあっと粘つく音を立て、白い糸がのびる。無邪気に開けた口の中、赤い舌が透ける。
「まだ元気だろ? できるよな?」
答えは一つ。他には無いね。ゼロだね、ありえない!
「………Yes」
分厚い体に飛びついて、いきり立つペニスが火照った穴にまっしぐら。
もはや入れることしか考えない。ぶちこむことしか考えない。
まるで十代、思春期並に性欲むき出し、待ったなし。
四十路のおっさんが二人して、がっつき、むさぼり、ガツガツがしがし腰を振る。
(一体、どうしてこうなった?)
「まだ元気だろ? できるよな?」
答えは一つ。他には無いね。ゼロだね、ありえない!
「………Yes」
分厚い体に飛びついて、いきり立つペニスが火照った穴にまっしぐら。
もはや入れることしか考えない。ぶちこむことしか考えない。
まるで十代、思春期並に性欲むき出し、待ったなし。
四十路のおっさんが二人して、がっつき、むさぼり、ガツガツがしがし腰を振る。
(一体、どうしてこうなった?)
風呂上がりの一杯
「先に上がるぞ」
「えー」
「しつこい」
まといつく手をぴしゃりと叩き、フジイを残してさっさと風呂から出る。ぐずぐずしてるとなで回されて、のっぴきならない状況まで追い込まれちまう。いつだってそうだ。今日も虎視眈々と狙ってた。とにかく先手必勝、早めの撤退が肝要。
扉を閉める直前、露骨にがっかりしたため息が聞こえたが知ったことか。
(ざまぁみろ。そういつもいつもあの、クソったれのアヒルに鳴かされてたまるか!)
上機嫌で身体をふいて、服を着てキッチンへ。冷蔵庫の扉を開けると、ガラスポットに入った茶があった。
風呂上がりの冷えたビールは美味い。だが本気でのどが乾いている時はむしろ、お茶の方がありがたい。店で売ってるボトル入りの甘ったるいアイスティーとちがって、フジイの入れる茶は甘みが一切無い。乾いたのどに実に心地よいのだ。
ガラスポットを取り出し明かりにかざす。さてこいつは「ムギチャ」だろうか。それとも「リョクチャ」かウーロン茶か?
色は透き通った黄緑色、ってことはリョクチャ、か。しかしコップに注ぐと、ほのかにジャンスミンの香りがする。
(中国茶か。珍しいな)
「んっ……ぷはぁっ」
一気に飲み干す。甘味料を一切加えない、さらっとした茶がのどをうるおし、乾いた体にしみとおる。
「ちょっ、V.I?」
「ん?」
ふり向くと、フジイがいた。目をまんまるにしてこっちを見ていた。
「君、それ、飲んじゃったの?」
「ん? ああ。珍しいな、中国茶か?」
「いや、ハーブティー……ってかそれ、薄めて飲むための物なんだよ。味、きつくなかったか?」
「いや、別に?」
言われてみれば若干香りが強かったが、一気に飲んだからほとんど気にならなかった。苦いとも渋いとも感じなかった。結論。
「普通にお茶だった」
「……ならいいんだ」
「お前も飲むか?」
「うん、もらう」
フジイは少量の茶をコップに注いで、それから氷と水を加えて飲んだ。なるほど。本来はああやって飲むのか。
濃いのを一気に
どひゃあ。
参った。参った、参りましたよ? まさか自分から飲んじゃうなんて!(君って時々、驚くほどに天然だ)
それとなく水割りにでも仕込んで飲ませるつもりだったのに、ストレートで一気飲み。予想外もいいとこだ。体に悪いものは入ってないはずだが、物が物だけに一応、調合した本人にメールしとくか。
『煮出したのをそのまま、コップに一杯飲んじゃったんだけど大丈夫かな』
5分と待たせず返事が届く。
『問題無し。ただ効果が強く出るかもしれない。まあ、がんばれ?』
「……なるほどね」
ベッドにこしかけてスマホをいじっていたら、不意に背後から抱きつかれる。
「っ!」
「フジイ~」
時が、止まった。
何。
何なの。
何が起こった、この鼻にかかった甘えた声は。
抱きつく体は明らかに、風呂上がりとは違ったレベルの熱を帯びている。
「スマホなんか見てないで、こっちに来いよぉ」
(うわぁ)
ぶっとい腕をからめて体を密着させ、あまつさえくいくいと顔をこすりつけてらっしゃいますよこの赤毛の子猫ちゃんと来たら!
何てまぁ、切なげでもどかしげに鳴くことか! いつもはキスしてキスしてキスしまくってなめ回し、さんざん焦らして一回入れた後でもなけりゃ到底、聞くことができないレアな艶声。(これが原液の威力か……)
わき起こる感動とこみあげる欲情に全身が震える。口の中にじわじわと大量のだ液がにじみだし、飲み下すのどが鳴る。
「待たせるなっ」
勢いよく引っ張られ、あっと思った時は唇が重なっていた。
「むっ」
「んぅっ」
ああ、君がこんな風に自分からキスしてくれるなんて!
胸元のシャツを握ってすがりつき、目を閉じて濡れた唇を押し付けて来るなんて。自分から舌を入れて、金魚みたいにぴちぴちと必死に振り回すなんて。この幸せ、できるだけ長く味わいたい。噛みしめる一方で思わずにはいられない。
(今すぐぶっ込みてぇっ)
やれやれ、薄めて飲んでこの効き目か。原液をコップに一杯飲んだ彼がどうなっているかは推して知るべし。
性欲の強さはキスのねちっこさに比例する。股間で雄叫びを上げる性器の代わりに、いやむしろそのものと化した舌を濡れまくった口に突っ込んで、火照ってねとつく粘膜を夢中になってこする。えぐる。引っかき回す。
じゅぶじゅぶ、ぐじゅぐじゅ音がする。卑猥な音を立てて、ぬるつく生きた肉がのたうち回る。
舌と舌を重ねて激しく抜き差し。唇を愛で、中を犯す。かちかちと歯のぶつかる音が、ブレーキをかけるどころか余計に劣情をあおる。
「ぷはぁっ」
「ふっ……はぁ……」
息をする間も惜しんで貪り合い、軽く目まいが来て初めて限界を知り、渋々離れる。
勢いよく息を吸う口を伝い、交じり合っただ液がしたたる。粘ついて、糸を引くのは発情しているからだ。
そのくせうっとりするほどいい香り。さっき飲んだお茶のせいだ。
Tea for Tonight
悩ましくも甘美な愛の衝動を呼び覚ます、不埒なお茶。中味はジャスミンとバラとメリッサ、ネロリ、イラン・イランにローズマリー、ジンジャーその他。リラックス、催淫効果のあるハーブとスパイスを使い、本職の魔女が秘伝のレシピで調合した穏やかな媚薬。
作った当人曰く、満月の夜、心身を解き放ち性欲を高める『呪文』を込めたそうだ。
『祈り、信じて、混ぜるなら何でも魔法の薬に成りえるのさ。パスタソースも、ハーブティも、お望みとあらばクッキーだってな』
馬鹿にしちゃいけない。この国では稲荷の祠と同じくらい、いやもしかしたらそれよりも魔女は身近でありふれた存在なのだ。
『信じるかどうかはお前さん次第だぁね。まぁ、アレだ。意地っ張りな相手がいつもよりほんの少し、素直に甘えてくるかも知れねぇよ?』
電話の向こうで含み笑いを零し、こいつを送り付けてきたのは祖母直伝の一流の魔女術(witch craft)の使い手にして、懐かしき西海岸で暮らす友の一人。
向こうに住んでた時分には度々、彼の調合する『魔女のお茶』の世話になったもんだ。口にした瞬間は穏やかな香りとあたたかさにほっとして、気付いた時には効いている。(一応断わっとくが、媚薬に限った事じゃないぞ?)
別にねらって飲ませようとした訳じゃない。
気分を盛り上げるために、使うチャンスがあったらなあ、程度の淡い期待を込めて作り置きしておいたらヴィヴィちゃん、まさか原液を飲み干すとは!
本当に、本当に君ってば惚れ惚れするほどダイナミックでワイルドで……愛しいほどにナチュラルだ。
「フジイぃ~~~」
かぷっと耳たぶに噛みつかれる。歯は立ててないし、大して力も入れない甘噛みだ。しかし甘えた声と湿った息が肌をなぞる。
「……欲しい」
リミッターをとっぱらうには、充分だった。
積極的に卑猥
「んん、んふぅ、う、うぅうん」
ああ、夢ならさめないでくれ。あの意地っ張りなV.Iが。身長6フィート越えのがっちりした筋肉質の厳つい男が俺の股間に突っ伏して、ペニスしゃぶりながら自分で自分のアナルを解してる。悩ましげに喘ぎながら、ぴっちゃぴっちゃと音を立てて舐めている。まるでキャンディバーでもほお張るみたいに。
「ふっ、ん、んぅ」
濡れた肉厚の舌が蠢く。唇がめくれて竿をこする。後ろを弄る自らの指にすら耐え切れないのか、時折細かく震えている。
見えない弾が撃ち込まれる。
引き金は彼の一挙一動、声の生み出すわずかな震動、ひっくるめてその全て。痛みと快楽の境目を行き来して、時々予想外のタイミングでぐっと深く快楽の領域に踏み込む。油断できない。
「あぁ……たまんないよ、ヴィヴィ」
反論は無し。うっすら開いたまぶたの間から、ゼリーみたいにうるんできらきらした瞳がのぞく。乱れた赤毛のすき間から、上目使いに見あげてくる。(たまらん)
……と。卑猥な水音とともに一段と強く強く吸い上げられた。
「っくぅっ」
やばい。
気持ちいいやら、愛おしいやら。ちょっとでも気を抜いたらたちまち破裂しちまいそうだ。(一発ぐらい、出してもいいんじゃないか?)股間が腫れぼったく熱を帯びてる。全身の血がそこに集まってる。(いつもより、多いし早い)
よかろう。ここは一つ、魔女のお茶を信じようじゃないか。
「……勘弁してくれ、V.I。そんなに、強く吸ったら」
何だ、この声。
「イっちまうよ」
あおるつもりでわざと懇願した。そのはずなのに、濡れてかすれて途切れがち。限りなく本気の生々しさ。いや、本当に。
「うっ、おぉうっ!」
こいつ! すすってるよ。ばっくりディープスロートして、顔を激しく上下させてっ!
「ふおっ、い、いきなりそれは反則だろうっ!」
聞こえてるのか、聞こえてないのか。(あ、自分の穴に指入れてないかもしかして)
参った参った、参りました!
普段意地っ張りな恋人が、自分のケツの穴ほじりながら俺のをしゃぶってる。上も下も自ら犯して、明らかにスパートかけてきやがった。
これはもう出していいってことだな? 出せってことだな? OK、いいだろう。(ってかもう、それ以外考えらんねぇっ)
くしゃくしゃに乱れもつれた赤毛に指を絡め、こっちもがむしゃらに腰を振る。吸われたら押しつけ、抜かれたらこっちも引く。二人分の動きで二人分の快楽を捩りあわせて、ひねり出し……
「お、おぉおおっ」
どぷっと音が聞こえた。体の一番、奥から。まといつく柔らかで容赦無い肉に向かって、煮え滾る性をぶちまける。
「んう」
「っはぁあ………」
呻いて、飲み込んでる。咽の動きでわかる。
「あぁ……」
やっちまった。一回で飲み切れなかったんだろう。口の端っこから零れてる。ひどくいやらしい眺めだ。
「んくっ」
「おっ、え、あ、やめっ」
まだすすってる。ストローで、クリームたっぷりどろっと濃いめのアイスラテすするみたいに、中に残ったのまで吸い上げていらっしゃる!
「ストップ、V.I、ストーップ!」
慌てて耳をひっぱったら、不満げに唸ってようやく口を離してくれた。
「んだよぉ。こんな濃いの出してるくせに」
かぱっと開けた口ん中に、半透明になった白い粘つく液が糸引いてる。赤い舌が透けて見える。
「まだ元気だろ? できるよな?」
「……Yes」
ずくんっと股間が疼く。
ああ、その時の彼の笑顔と来たら。細めた目の縁にうっすら涙をにじませて、白い肌にコーラルピンクがさして、発情しているくせに、あどけない。素直で淫らで淫猥で……。
「君のその顔、すごく」
「ん?」
「……卑猥だ」
「阿呆言ってないで、さっさと来い」
喘ぐ吐息は、濃厚な栗の花のにおい。どことなく生臭いのは、生き物の体液だからだ。
俺の、精液だからだ。
「焦らすなよ、フジイ」
到る所に古傷が赤く浮ぶ、筋骨たくましい堂々たる体躯。
惜しみなくさらけだし、ベッドにうつ伏せになって尻を掲げ、脚を開く。
視線が吸い寄せられる。皮膚の下で肉がうねる動きによだれがこぼれそうだ。のみならず、自分から手を伸ばして尻肉の間につっこみ、指で広げた。
すっかり馴らされほぐされて、濃密なピンクに色づくアナルを……泡立つローションがよだれみたいに滴る。
咽が鳴る。股間が疼く。
「では遠慮無く……」
「あっ」
「お邪魔します」
甘くとろける子猫ちゃん
「あっ、あっ!」
響いてる。
骨に。腑に。内側と外側から響く、汗ばむ体と体のぶつかる音。互いに互いをひっぱたいてるような音が空気を震わせ、体がたわむ。
「んぅ」
昂ぶって昂ぶって昂ぶると、あちこち触る余裕が無くなる。ひたすら突っ込んで、突っ込まれて、腰を振って、出す。それだけの単純な行為に没頭しちまう。
そんな男とセックスする時、肌が擦れるだけで射精しそうになったらどうなる?
(何だか変だ。でも気持ちいい、すげぇ気持ちいいっ)
キスしただけでケツ穴がうずいて、もうぶち込まれることしか考えつかない。中に入ってない状態の方がおかしい。口でむしゃぶりついて、しゃぶって咽に浴び、腹に収めただけじゃ足りない。
(もっと欲しい。もっと、こいつに満たされたい。むしろ全身で浴びたい)
頭も手足も全部溶けてケツの穴にくっつき、飲み込まれる。ただ奴を貪る穴になる。
「フジイ、フジイっ、お前のペニスが入ってる、あ、あ、固いぃっ、ごつって当たる、気持ちいいっ」
本能と思慕が捩じり合わさり発酵し、獣の交尾に成り果てる。
俺は彼に夢中で彼も俺を求めている。突っ込む棒と絡みつく穴を介して、そこだけはがっちり噛み合ってる。
結果は暴走。ノンストップ、限定解除、手加減無用。ただただ絶頂めがけて突き進む。
明日の朝どうなるか、なんてしみったれた懸念はかなぐり捨てる。一秒先のことさえ、考えられない。
(ほぼ同年代、自分より華奢な男にこんなあられもない顔見せられるか? 声、聞かせられるか? かっこ悪ぃ!)
理屈や見栄の入る隙間は無い。まず体が動き、思考は後からついてくる。(多分そうだ)
撃ち込まれるペニスの先端が、気持ちのいい場所に当たるように角度を変えて尻を掲げ、腰を振る。
(もっと腹側。ペニスの根元。ああ、惜しい。衝撃だけじゃもどかしい。直にぶち抜かれたい! もっと強く。ああ、もっと、もっと!)
「……ヴィヴィ」
耳の後ろで奴が唸る。首筋に滴る体液は汗か、涎か?
(こいつの声は、甘い)
最初にセックスした夜に思い知らされた。生まれ持っての声質なのか、母国語の響きと英語が融合した結果なのか。女の子みたいな名前で呼ばれようが、子猫ちゃん呼ばわりされようが、声の甘さと言葉の心地よさに抗うのを忘れちまう。むしろ囚われたくなる。
「あ、はぁっ、フジィぃ」
肩越しに振り返る。キスするには微妙に遠い、それでもつい、舌を伸ばしてしまう。それでもいい。別の場所で、がっつり繋がってさえいれば。
「もっと、もっとごりごり押してくれよおっ。遠慮なんかするなよ今更ぁ」
「……OK」
尻の穴に打ち込まれた固いペニスが入り口まで引き抜かれ、カリの段差ぎりぎりの位置で止まる。無意識にケツの穴に力が入り、腸壁が引っかかれる。
「あ、あ、あ、出ちまうっ! 腹の中味ぃ、出ちまうぅっ」
「心配すんな……すぐに入るよ、君の中へ」
「う……うん」
頷いた直後に、がつんと奥へ。とっさにベッドのヘッドボードに手をつき、目一杯尻を突き出した。
「か、はぁっ!」
視界がゆれる。めくれて外側に引きずり出された肛門が、一気に奥にねじ込まれる。充血した皮膚がよじれる鈍い痛みにうめく。(それさえも、快楽)
「おぉううっ!」
揺れるペニスの根元が腫れぼったい。そこに体内からぶち当たる、固いモノが気持ちいい。(そうだ、そこだ)
こすられるケツの孔が気持ちいい。突き刺さる震動が良すぎて勝手に声が押し出される。
「そこぉ。そこぉがあ、いい、気持ちぃいいっ」
すかさずその場所を狙い、汗ばむ体が容赦なく叩きつけられる。全身の肉が震え、波打つ。
「んぐぅ、あっ、おぁっ」
腑がせり上がり、咽の奥にあるはずのない塊が詰る。
「あぁ……いいね……君が自分で、たっぷりいじり回したから……ふっ、く、滑りが、よく、なって、る」
「だったら、もっと、激しくしろよっ! 奥までつっこめよっ! 遠慮なんていいから、フジイ、フジイっ」
「っ」
涎をすすり、にじむ汗を舐めながら訴える。舌の奥にまだ、さっき飲んだ奴の精液がからまってる気がする。その匂いと粘りに脳みそが沸騰する。
「も、種馬になっちまえよぉっ」
「あぁ……子猫ちゃん、君が望むなら」
ひと息吸って、後は無言。指が食い込むほど強く俺の腰を抱え込み、全身をバネのようにしならせる。そのくせ、動きはひどくシンプルで、原始的で即物的。
「おっおう、おっ、おおっ」
ひたすら腰を振ってる。盛りのついた雄犬みたいに。余裕もテクニックも強弱も無い、ただただひたすらガン掘りされる。
「う、お、あ」
汗ばんだ肉と肉がぶつかって、びたぁん、びたぁんとどこか間延びした音が聞こえる。そのくせぶち当たる痛みと衝撃は強い
視界がゆれる。ベッドが軋む。嵐のまっただ中にたたき落とされた小舟みたいにゆさぶられ、巻きこまれる。
「おふぉおっ、う、あう、お、あ、あーっ」
自分が今どうなってるのか。何を口走ってるのかわからない。
そのくせ感覚だけは怖いくらいに冴え渡る。
「はひいっ、い、そこ、そこぉっ」
尾てい骨(おっぽ)の付け根に奴のペニスが刺さり、そのまま背骨まで突き抜ける。脊髄の内側までごりごりと抉られてる気分だ。
「あはぁっ、もっとぉ。フジイ、もっと強くっ」
欲しい、欲しい、お前が欲しい。お前の声。手、指、肌、腹、肩も背中も尻も太股も……今、俺の中を滅茶苦茶に引っかき回してる凶暴なペニスも。
「いい、あふっ、いい、気持ちいぃっ」
肌からにじむ汗も、よだれも、吐き出される精液の一滴まで全部、全部。
「あうっ、おふぉ、あ、やっ、もっと。もっとぉっ、欲しい、欲しいよぉっ」
「OK……出すよ。ほら……っ君の中にたっぷり種付けしてやるから……しっかりケツの穴締めてぇ、全部飲み込め!」
ぴしゃりと背中を平手で叩かれる。
「ひっ!」
衝撃は走るが痛みは無い。むしろ肌がざわめき、尻の穴がすぼまる。
「あ、あ、あああっ、イく、も、イくぅうっ」
ばつんっ。
それまで、腹側めがけて抉っていたのとは逆に、背骨に向かって奥まで撃ち込まれる。強烈だ。涙がこぼれる。
「い、ひぃんっ」
膨れ上がるペニスが腸内を強引に押し広げ、圧迫する。脈打つ塊がケツ穴をくぐり抜けるのがはっきりと分かった。
「あ、あ、中っ、広がって!」
涙で視界がにじむ。
うつ伏せに組み伏せられたまま、カクカクと小刻みに尻をくねらせ、ゆすり、すり付ける。
「ふ……くっ!」
出た。どろっと粘つく物が中にぶちまけられた。
「熱いぃっ、お前の精液っ腹ん中ぶちまけてっ、っぁあ、熱い……」
全身の筋肉に稲妻が走る。勝手に反り返り、次の瞬間、前に屈んで丸くなる。
「あっ」
ごりごりと尻を押し付けたら、フジイが上ずった声で喘いだ。その無防備な声が引き金を引く。
「んんっ、出る、くふっ、出ちまう、やぁあ、もう、ダメだ、ダメだ、我慢できないぃっ」
(触ってないのに。しごかれてもいないのに!)
「あー………」
ペニスが脈打つ。ぴしゃっと粘つく熱い体液が飛ぶ。自分が出した物の飛沫が、太股や腹に飛ぶ。
「は、あぁあ……」
ものすごい解放感だ。普段頭の中で口走ってる事を、洗いざらい全部声に出しちまったから。
ひたすら晴れ晴れとして、気持ちいい。
「あ……」
ぐったりと放心していたらいきなりペニスが引き抜かれる。
「ひぅっ」
あお向けにされただけでもう、ケツの穴がこねられて、全身の筋肉が勝手に跳ねる。
びくびくと。
水から上がった小魚みたいにびくびくと。
自分じゃ、コントロールできない。
「君のその顔、最高に可愛い」
霞む視界の中、フジイがのしかかる。唇が重なり、ふくらんだ舌がねじ込まれる。
「ん……」
迎え入れ、ちゅくちゅくと音を立ててすすった。
さっき飲んだ茶の香りがした。
「う」
出したばかりのペニスがずくん、と疼く。
「なぁ……」
「ん?」
全身をすりよせ、奴の耳にささやく。唇で耳たぶを挟み、バロックパールのピアスをしゃぶる。
(お前は知らない。セックスの時、火照って湿った肌にこいつがどれだけ映えるか。艶を増すか)
「よせって……こら」
「もっと、欲しい」
フジイは二度ばかりまばたきをして、にんまりと笑った。口角を吊り上げ、目をすがめ、とてつもなくいかがわしい。腹に一物含んだ笑い方してやがる。(たまらない)
「……俺もだ」
ぎらつく褐色の目が狙いをつけてるのは俺。(それでいい)
「来いよ」
思い切り脚を広げた。白濁にまみれたペニスも、さんざん掘られたケツの穴までよく見えるように。出されたばかりの精液があふれ、肌を伝い落ちる。(これ見るの、好きだろお前?)
「うれしいね」
ほくそ笑む唇が太股を這いずり、そして……
「あっ」
(甘え上手な子猫ちゃん/了)
十海
2015-07-22 04:34:04