リックの制服のネクタイを引っ張った。
たったそれだけの事だった。
リックがネクタイを身に着けている姿を見るのはハルトは勿論アカデミーの生徒達も初めてだった。
第7アカデミー時代の制服はリボン着用であったし格闘科の制服は無論ネクタイもリボンも要らない。
トーキョーに来て制服を新調にあたり初めてリックはネクタイを着用する事になったのだ。
結び方を教えてやろうとしたがリックは難なく結べていてつまらない思いをしたのをよく覚えている。
ハルトは現状に目を向けた。
ここ最近現れたクサビの調査のため休日に学校に出向く事になったためハルトとリック以外人っ子一人いない。
学校周辺は安全だったため皆が居る他の場所に向かおうとリックが先に歩き出した瞬間
リックのネクタイを掴み引っ張り上げた。
そして、今に至る。
2人の距離はやや近い。傍から見れば喧嘩している様に見えるだろう。
「どういう、つもりだ」
僅かな沈黙の後先に口を開いたのはリックだった。
眉を吊り上げたその表情は戸惑いと怒りを含んでいる。
「先ず言っておく。無意識では無いという事だ」
「は…?」
何言ってるんだ、と言いたげに唖然としているリックにハルトは言葉を重ねる。
「からかおうとしたわけでもない」
「だとしたら何故…」
「その顔が見たかったからだ」
「…は?」
口を開けているリックをよそにハルトは続けた。
「普段から気を引き締めていて動揺とは無縁な貴様の顔を乱してやりたくなった。
だが俺と貴様は第7アカデミーからの縁だ。ちょっとやそっとの事では驚かないくらいお互いを知り尽くしてしまっていた
そこでだ」
ハルトは自分の指を指示棒の様に真っ直ぐ動かし、リックのネクタイを指した。
「このネクタイはトーキョーに来てから加わったものだ。
俺からすればこれは未知なるアイテムであり触れれば持ち主はどういう反応がするか解明されていない。
もしかすると貴様を乱せるかもしれないと思ってな考えてな」
「よく、わからないが…俺の驚いた顔を見たかっただけなのか?」
「そうとも言えるが、好奇心でもあるな」
「意味がわからん。…もう離してくれないか」
もう満足しただろ、と不機嫌に話すリック。
これ以上掴んでいたら1発お見舞いされそうだとハルトは判断しネクタイから手を離した。
その後リックはすぐに皆が居る別の場所へ走って行ったためハルトは慌てて追いかけた。
(それにしても…)
走りながらリックは僅かでも動揺してしまった自分に混乱していた。
(何なんだ…顔は近いと思いきや変な発言をする…ハルトはどうしたんだ)
そして、その顔が見たかったと言ったあの顔。
あんな真面目で澄み切った瞳をしたのはいつ以来だったか。いや、初めて見たのかもしれない。
(心を落ち着かせろ…冷静になるんだ、今はクサビの調査が大事だ)
リックに追いつく事が到底不可能に思えたのでハルトは自分のペースで皆の場所へ向かう事にした。
自分が見たかったと言ったリックの「その顔」が今でも鮮明に思い出せる。
驚きで開かれた口。
見開かれ瞳孔が小さくなった青い瞳。
いつでもキリリとしていた童顔が崩れたあの瞬間。
(次はどんな顔を見てやろうか…フッ、これだから奴には飽きない)
飽きる事の無い好奇心は高まるばかり。
たったそれだけの事だった。
リックがネクタイを身に着けている姿を見るのはハルトは勿論アカデミーの生徒達も初めてだった。
第7アカデミー時代の制服はリボン着用であったし格闘科の制服は無論ネクタイもリボンも要らない。
トーキョーに来て制服を新調にあたり初めてリックはネクタイを着用する事になったのだ。
結び方を教えてやろうとしたがリックは難なく結べていてつまらない思いをしたのをよく覚えている。
ハルトは現状に目を向けた。
ここ最近現れたクサビの調査のため休日に学校に出向く事になったためハルトとリック以外人っ子一人いない。
学校周辺は安全だったため皆が居る他の場所に向かおうとリックが先に歩き出した瞬間
リックのネクタイを掴み引っ張り上げた。
そして、今に至る。
2人の距離はやや近い。傍から見れば喧嘩している様に見えるだろう。
「どういう、つもりだ」
僅かな沈黙の後先に口を開いたのはリックだった。
眉を吊り上げたその表情は戸惑いと怒りを含んでいる。
「先ず言っておく。無意識では無いという事だ」
「は…?」
何言ってるんだ、と言いたげに唖然としているリックにハルトは言葉を重ねる。
「からかおうとしたわけでもない」
「だとしたら何故…」
「その顔が見たかったからだ」
「…は?」
口を開けているリックをよそにハルトは続けた。
「普段から気を引き締めていて動揺とは無縁な貴様の顔を乱してやりたくなった。
だが俺と貴様は第7アカデミーからの縁だ。ちょっとやそっとの事では驚かないくらいお互いを知り尽くしてしまっていた
そこでだ」
ハルトは自分の指を指示棒の様に真っ直ぐ動かし、リックのネクタイを指した。
「このネクタイはトーキョーに来てから加わったものだ。
俺からすればこれは未知なるアイテムであり触れれば持ち主はどういう反応がするか解明されていない。
もしかすると貴様を乱せるかもしれないと思ってな考えてな」
「よく、わからないが…俺の驚いた顔を見たかっただけなのか?」
「そうとも言えるが、好奇心でもあるな」
「意味がわからん。…もう離してくれないか」
もう満足しただろ、と不機嫌に話すリック。
これ以上掴んでいたら1発お見舞いされそうだとハルトは判断しネクタイから手を離した。
その後リックはすぐに皆が居る別の場所へ走って行ったためハルトは慌てて追いかけた。
(それにしても…)
走りながらリックは僅かでも動揺してしまった自分に混乱していた。
(何なんだ…顔は近いと思いきや変な発言をする…ハルトはどうしたんだ)
そして、その顔が見たかったと言ったあの顔。
あんな真面目で澄み切った瞳をしたのはいつ以来だったか。いや、初めて見たのかもしれない。
(心を落ち着かせろ…冷静になるんだ、今はクサビの調査が大事だ)
リックに追いつく事が到底不可能に思えたのでハルトは自分のペースで皆の場所へ向かう事にした。
自分が見たかったと言ったリックの「その顔」が今でも鮮明に思い出せる。
驚きで開かれた口。
見開かれ瞳孔が小さくなった青い瞳。
いつでもキリリとしていた童顔が崩れたあの瞬間。
(次はどんな顔を見てやろうか…フッ、これだから奴には飽きない)
飽きる事の無い好奇心は高まるばかり。