空が暗い。
まだ正午過ぎだというのに、どこまでも続く灰色の闇と、そこから降り注ぐ雨はどうにも明けそうにない。
クロウは部屋に寝そべって、ただ空を見つめていた。
せっかくの休日に生憎の雨天で、外に出る気にはなれなかったからだ。
「まぁ…たまにはいいか」
普段ならば雨でもこれほどまで無気力になることはない。
だが、今日は雨の他に心にも霧がもやもやと立ち込めていた。
というのも昨日、アイオーンの唐突すぎる行動に釈然としないまま帰ってきてしまったから。
「あれって、キス…だよ…な…」
また一人呟く。
口に出してみると、昨日の出来事がより鮮明に脳裏に浮かぶ。
―昨日。
クロウがライブからの帰り支度をしていると、シャワーを終えたアイオーンが戻ってきた。
控室には二人きりだったがクロウは次に単独取材の仕事があるため、メンバーを待たずに移動する予定だったのだ。
「これから取材か?」
アイオーンが衣装をドア横のハンガーに掛けながら問い掛けてきた。
「ああ、わりぃけど先に移動するわ」
クロウは迫る時間に追われ、慌ただしくアイオーンの横を擦り抜けてドアノブに手をかける。
「…そうか」
意図の掴めない、興味があるのかもわからないアイオーンの返事。
そしてドアを開けようとしたその時、ドアノブを掴む手に急に手が重ねられた。
何ごとか、と背後のアイオーンに顔を向けた瞬間に、不意に視界が覆われる。
一瞬の、時が止まったかのような静寂。
「…しっかり、やれよ」
クロウを現実に呼び戻したのは、至極至近距離で聞こえたアイオーンの声。
「―――え」
何か言おうと口を開いた途端、重ねられたままの手でドアを開けられ、廊下に放り出されてしまった。
背後でバタンとドアの閉まる音。
だが、振り向いてそのドアを開ける勇気も時間も、クロウにはなかった。
今日がオフで心底よかったと思う。
アイオーンにもあと二人にも明日どんな顔で会おうかと、そればかり考えている。
空は相変わらず、暗い。
まだ正午過ぎだというのに、どこまでも続く灰色の闇と、そこから降り注ぐ雨はどうにも明けそうにない。
クロウは部屋に寝そべって、ただ空を見つめていた。
せっかくの休日に生憎の雨天で、外に出る気にはなれなかったからだ。
「まぁ…たまにはいいか」
普段ならば雨でもこれほどまで無気力になることはない。
だが、今日は雨の他に心にも霧がもやもやと立ち込めていた。
というのも昨日、アイオーンの唐突すぎる行動に釈然としないまま帰ってきてしまったから。
「あれって、キス…だよ…な…」
また一人呟く。
口に出してみると、昨日の出来事がより鮮明に脳裏に浮かぶ。
―昨日。
クロウがライブからの帰り支度をしていると、シャワーを終えたアイオーンが戻ってきた。
控室には二人きりだったがクロウは次に単独取材の仕事があるため、メンバーを待たずに移動する予定だったのだ。
「これから取材か?」
アイオーンが衣装をドア横のハンガーに掛けながら問い掛けてきた。
「ああ、わりぃけど先に移動するわ」
クロウは迫る時間に追われ、慌ただしくアイオーンの横を擦り抜けてドアノブに手をかける。
「…そうか」
意図の掴めない、興味があるのかもわからないアイオーンの返事。
そしてドアを開けようとしたその時、ドアノブを掴む手に急に手が重ねられた。
何ごとか、と背後のアイオーンに顔を向けた瞬間に、不意に視界が覆われる。
一瞬の、時が止まったかのような静寂。
「…しっかり、やれよ」
クロウを現実に呼び戻したのは、至極至近距離で聞こえたアイオーンの声。
「―――え」
何か言おうと口を開いた途端、重ねられたままの手でドアを開けられ、廊下に放り出されてしまった。
背後でバタンとドアの閉まる音。
だが、振り向いてそのドアを開ける勇気も時間も、クロウにはなかった。
今日がオフで心底よかったと思う。
アイオーンにもあと二人にも明日どんな顔で会おうかと、そればかり考えている。
空は相変わらず、暗い。