「この、変態」
彼が言う。乱れた息の合間から、潤んだ瞳でにらみつける。
「知ってる」
俺が答える。汗ばむ肌に舌を這わせて。
それはもう、一つの儀式みたいなものだった。
掘られて始まる恋もある。俺と彼とがそう言う関係。もっとも、掘ったのは俺の方だった訳だが。
出会ったその夜に足腰立たなくなるまでヤりまくった。結果、最初のセックスの後に彼の家を教わった。とても一人で帰せる状態じゃあなかったし、階段を上るのも難儀している有り様につい、手が出ちまった。
彼は拒まなかった。
責任とって部屋まで送り届け、ついでに起き上がれるまで付き添った。(それでも半日で立ち直ったんだから、大した体力馬鹿だ)
必然的にこちらも住み処と名前を明かし、最後にメールアドレスを交わして別れた。
逆送も甚だしい。しかし初っぱなから俺たちは、ポジションが逆転してた。
つまり、どう言うことかってぇと、掘るつもりで押し倒したのは、最初は彼の方だったんだ。
「この、変態」
「知ってる」
ニューヨーク(この街)の人口はおよそ820万。しかしながらこの中にゲイで、同年代で、喫煙者で。ついでにセックスの相性がしっくり合う相手なんざ、何人居るだろう?
一夜の偶然ですませるには、あんまりにも俺たちは相性が良過ぎた。
週に一度、暇を見つけて顔を合わせて。しわくちゃになったシーツと使い終わったコンドーム、事後の一服を分け合った。
そのうちベッドに飛びこむ前に軽く一杯引っかけるようになり、そいつが飯に変わり……
今じゃ、終わった後にコーヒーを飲んでる。
それでもやっぱり、言われちまうんだな。
「この、変態」
「……知ってる」
彼が言う。乱れた息の合間から、潤んだ瞳でにらみつける。
「知ってる」
俺が答える。汗ばむ肌に舌を這わせて。
それはもう、一つの儀式みたいなものだった。
掘られて始まる恋もある。俺と彼とがそう言う関係。もっとも、掘ったのは俺の方だった訳だが。
出会ったその夜に足腰立たなくなるまでヤりまくった。結果、最初のセックスの後に彼の家を教わった。とても一人で帰せる状態じゃあなかったし、階段を上るのも難儀している有り様につい、手が出ちまった。
彼は拒まなかった。
責任とって部屋まで送り届け、ついでに起き上がれるまで付き添った。(それでも半日で立ち直ったんだから、大した体力馬鹿だ)
必然的にこちらも住み処と名前を明かし、最後にメールアドレスを交わして別れた。
逆送も甚だしい。しかし初っぱなから俺たちは、ポジションが逆転してた。
つまり、どう言うことかってぇと、掘るつもりで押し倒したのは、最初は彼の方だったんだ。
「この、変態」
「知ってる」
ニューヨーク(この街)の人口はおよそ820万。しかしながらこの中にゲイで、同年代で、喫煙者で。ついでにセックスの相性がしっくり合う相手なんざ、何人居るだろう?
一夜の偶然ですませるには、あんまりにも俺たちは相性が良過ぎた。
週に一度、暇を見つけて顔を合わせて。しわくちゃになったシーツと使い終わったコンドーム、事後の一服を分け合った。
そのうちベッドに飛びこむ前に軽く一杯引っかけるようになり、そいつが飯に変わり……
今じゃ、終わった後にコーヒーを飲んでる。
それでもやっぱり、言われちまうんだな。
「この、変態」
「……知ってる」
呼び鈴が鳴る。
インターフォンを受けて、入り口のロックを解除してから5分も経ってない。
(どんだけ早いんだ、あいつ!)
エレベーターの乗り合わせが良かったか、あるいは階段で来たか、どっちだ?
とにもかくにも慌ててエプロンの紐を締め直し、玄関に飛び出した。のぞき穴から確認してドアを開ける。
赤みがかった褐色の癖っ毛、肩幅もウェストも胸板も厚い。実戦向けの筋肉だ。骨だ。戦う男の体だ。俺みたいに『見せる』ために作った体とはレベルが違う。本気でかかってこられたら、到底かなわない。
それでも肌は、赤毛の人間の常として血管が透けるほど白く、あらゆる意味で、いじらしいほどに正直。
「……来たぞ、フジイ」
「待ってた、V.I」
鳶色の瞳が一瞬見開かれるものの、声は平穏そのもの。やれやれ、猫柄エプロン程度じゃ動じてくれないか。
「つまらん」
「……お前は俺に何を期待してるんだ」
ひょいと首を伸ばして唇を重ねる。
「さっさと入れよ」
「お前もな」
※
仕度はとっくにできていた。
ゆで上がったパスタにソースを絡めて、皿に盛ってテーブルに乗せる。その間、彼は律義に後ろで見ていた。
「これ、持ってけばいいのか」
「うん」
でき上がった料理をいそいそと運ぶ姿は実に嬉しそうだ……身長6フィート越えのいかついおっさんが、たかだかパスタ一皿でうきうきしちゃってまぁ。
「可愛いな」
「お前の目は、おかしい」
はい、ここまでお約束。
「いやいや。男とワインを見る目は確かだよ」
家庭用のセラーから出したボトルを軽く拭ってテーブルに乗せる。
「お」
静かになった。ほんと素直な奴だよ。
差し向いでテーブルにつき、ワインを開ける。彼はいつものように深く香りを吸い込んでから、いっきにぐいっとあおった。
一杯目があっと言う間に無くなる。すかさずボトルを掲げて二杯目を勧める。
「美味いな」
「そうか、良かった」
続いてフォークで器用にパスタを絡めとる。アスパラ、ベーコン、そしてアンチョビ。ニンニクを利かせたソースも具材もまとめてぐるり。
大口開けてがばっとほお張る。
(大胆だなぁ)
頬が膨らむほどの量を一時に咀嚼して、また「お」と言う顔をした。
してやったり。
ほくそ笑みつつ三杯目を勧める。
「美味い」
「そーかそーか」
こちらも負けじとがつがつ食った。四十路の野郎が二人、それも一番、恥ずかしくってみっともない部分を共有してるんだ。今更気取ったところでどうなるよ?
ただ、目は離せなかったね。フォークの先端で玉になるまで巻き付けたパスタを。歯はおろか、口の中味まで見えそうなほど大口開けて、ほお張る姿は何とも、こう下品で、猥雑で……色っぽい。
「……」
「………何、見てる」
「君を見てる」
「ふん」
そっぽ向いちまったが食うペースは落ちない。
目が合ったってことは、あっちも俺を見てるって事だ。
「実を言うとね。美味いと言わせるのは意外に簡単なんだ」
皿もワインもあらかた空になった所で種明かし。
「事も無げに言うな、何だか腹が立つ」
「まあ聞けって」
三白眼でにらみ付けるのをにやけた笑いで受け流し、フォークで空になった皿を指し示す。
「例えばこのパスタだ。美味かっただろ?」
「ああ。美味かった」
むすっとして答える彼の皿は、パスタ一本、ベーコン一切れ残っちゃいない。
「君がどんな食い物と飲み物を好むかってぇのは、何度か一緒に飯を食えば分かる」
「ってことはアレか。『君と同じものでいい』って言ってたのは……」
「それもある」
頷いて、先を続ける。
「二人で食えばニンニクだってアンチョビだって平気だろ? 同じ物食って、同じ物飲んだんだ。キスの時、どれだけ混じったって気にならない」
「混じるの前提か」
「当然だ」
彼は無精髭にうっすら覆われた顎に手を当てて、皿をにらんだ。ニンニクも、アンチョビも、さっきのソースにがっつり入ってる。
「俺はプロの料理人じゃない。自分で食いたい物は自分で作るってレベルだ」
専門店の味を丸ごと真似するのは、どだい無理な相談。いかに日本人の味覚が鋭いとしても。
「それでも自分で作る時、味付けを君好みに『寄せる』事はできる。その結果が、これさ。美味かったろ?」
「ああ、美味かった」
「ワインにしたって、そうだ。肉でも魚でも、食う時は必ず赤ワインを選ぶ。それもパンチの利いた渋いのを、くいくい飲んでる」
「………それで、これか」
「まぁね」
「よく見てるな」
「君の事だからね」
「……フジイ」
「何だい?」
「一つ質問がある」
「うん?」
「何で、エプロンの下、服着てないんだ?」
いかにも。ドアを開けた時から、俺が身に着けてるのは紺色のエプロンだけ。胸に猫の顔がプリントしてある奴。
「いつ気付いてくれるか、待ってた」
「……この、変態」
「知ってる」
彼はいきなり立ち上がり……脱いだ。
上着も。その下に着てた黒の長袖のカットソーも。今や上半身は白のランニングシャツだけ。ぴっちり体に張り付いて、胸の筋肉の流れはおろか乳首の位置まで丸分かり。
それの裾にも手をかけて、じろりとこっちを横目で睨む。
「ベッドに行くぞ」
「ん」
もちろん、異存なんかあるはずがない。
「あ、その前に皿、洗っとかないと」
伸ばした手首をむんずと掴まれる。
「後でやれ」
「でも、このままじゃ乾いて、固まって、なっかなか取れなくなっちゃうんだよなぁ」
「これ以上待たせるな」
エプロンの胸当をつかまれ、ぐいとひっぱられる。勢いで肩ひもがずり落ち、布全体が下がる。
ああ、何てこった乳首まで見えちまう。
元より下には何も着けてない。だが何となくはだけられた気分になる。それ以上に彼の目が、あんまりに真剣すぎて……
ぞくっとした。
「やーん、ヴィヴィってば、こわーい」
視界が揺れる。あっと思った時は背中が壁に押し付けられ、顔の横にどすんっと、手を着かれた。
間近に迫るいかつい顔。目尻の皴、うなじの傷跡がはっきり見える。もうちょっと首を伸ばせばキスできそうだ。
「その呼び方はやめろ。さもないと」
低い、ドスの利いた声で囁かれる。
「この場でぶち犯す」
やばいね。ちょっと、今、時めいた。
物騒な台詞口にしながらほんのり頬を染めて、壁についた手が小刻みに震えてるのがポイント。
実にいい気分だ。
ほんと、彼氏が服脱いでる姿を見るのって、最高。
こっちはとっくに脱いでいる。腰から下だけ布団被ってベッドに寝そべり、じっくり視姦……もとい。鑑賞させていただいた。
自分から誘っただけあって、脱ぎ方にためらいが無い。(寝室に入った時はもう、上半身脱いでたしな)
ベルトを外す仕草ってどうしてこう、生々しいんだろう。ジッパー下ろす手つきのいやらしさ。ズボンが下ろされて、ぴっちりしたボクサーパンツに覆われた尻が出る瞬間と来たら! おまけつきお菓子のパッケージ開ける時の気分だ。
しかも、隠さない。(ここが大事)
ぷるんとおっ立ったご本尊様を堂々とそびえ立たせて歩いてくる。
「やる気だな」
「当然だ」
ぎしりとスプリングを軋ませてベッドに上がる、ぶっとい首に腕を巻き付け引き寄せる。
「ん」
唇を重ねて、貪った。
「ぅう」
互いに争うようにして舌をつっこみ、舐め合い、すすった。口の中味が混じり合う。同じ物を食って、同じ物を飲んだはずなのに微妙に味が違う。
(ああ、こいつの味なんだ)
それだけのことで恋しくなって、夢中ですすり上げる。
「んぶっ」
彼は眉をしかめて、顔を離した。
「いきなり、何しやがる」
「美味くてつい」
睨まれた。でも顔は赤いんだよな。ええ、この正直者め。口の周り涎でべたべたにしやがって。(ああ、これは俺もか)
そして股間も、もれなくぬるぬる。太股に当たり、ねっちょりと温い糸を引く。
「元気だなぁ。俺の裸エプロン見てそんなに興奮しちまったか?」
「した。だから今夜は」
ぐいと肩をつかまれ、シーツに押し付けられる。
「おっと」
のしかかるV.Iの肩越しに、見慣れた天井が見えた。
「俺が、上だ」
「……OK」
ほくそ笑んで手を伸ばす。
「ただし、条件がある」
※
「このっ、変態……っ!」
俺の上で彼が呻く。薄ピンクに色づいたつやつやの体に、紺色のエプロンを張り付かせて。俺が着られるくらいなんだからかなりでかいはずなんだが、それでも彼にはちっちゃいらしい。身長はほぼ同じだが、体の厚みは圧倒的に彼の方が上なのだ。
胸の……ってか見事な雄っぱいの形そのままに張り付いて、尖った乳首がぽっちり盛り上がっている。
「知ってる」
当然、下には何も着けてない。
「お前、ほんっとに、おかしい」
「似合うぜ?」
「クソったれが!」
おーおー歯なんか剥き出しにしちゃって。眉間に皴が寄ってるのは怒ってるからか? それとも、よがってるからか。
「不満そうだね? ご希望通り、君が上だぜ?」
「これは……違う!」
俺は仰向けになってベッドの上、彼は脚を広げて俺の上。たっぷりローションを塗り込まれてぬるぬるのとろとろにかき回されて充血したアナルには、ずっぷりと俺のナニが入ってる。
要するに騎乗位って奴だ。
エプロン着せて恥じらうヴィヴィちゃんをいじり回し、前をしゃぶりながら穴をいじる大サービス。さらに自分で後ろをいじり回す姿を見せつけて、とろとろに惚けた所で仰向けになってお誘いした。
「来いよ」ってね。
素直に寄ってきた所を尻をもみしだきながら誘導して、ぬちっと左右に開いて……
「あ、おい!」
抗議の声が上がった時にはもう、先っぽが入ってた。
「ずるい……ぞ、フジイ」
「来るのか? 来ないのか? どっちだよ」
「く、う、うぅっ」
悔しそうに唇を噛んで、彼は自分から腰を沈めた。(実に潔い)
「あっ、固っ」
「今更なんだよ、俺のナニ入れるの何度めだ、んん?」
「ち……がっ。角度が……あぁっ」
ローションぬったくった指でさんざんかき回したんだ。お尻の穴は濡れそぼち、いい感じに柔らかく解れてる。固いと文句を言いながらもぬちぬちと絡みつき、抜き差しするたびに伸びてひっついてくる。
「そらそら、せっかく上なんだ、好きなだけ腰振っていいんだぜ?」
「それどころじゃ……」
縮み上がったV.Iの腰をつかんでぬるぅりとペニスを引き抜く。内側の壁がひっついて、伸びる感触を味わった。
「う、く、ううっ」
一旦入り口近くまで引いてから、一気にずどんと根元まで。同時に腰を引きつける。
「ひっ」
V.Iが咽をのけぞらせ、悲鳴を上げる
いい眺めだ。エプロンの下でおっ立ったペニスがぷるんと震え、紺色の布が張り付いた腹筋が弾むのまで見えた。
「おおっと、すまんすまん、変なとこに当たったかなぁ」
いい締まり具合だ。にちゅにちゅとローションの助けを借りてこね回す。その度に咽奥で呻いて眉をしかめる。それなのにどんどん肌のピンク色が濃くなって、しっとり潤んで行く。つまり、滅茶苦茶感じてるってことだ。
「あっ、おぅ……」
「いいねぇ。いい気持ちだ」
せつなげに喘ぐばかりでろくに抵抗しないのをいいことに、しばらくゆるゆるとこね繰り回して中と外の反応を楽しんでいると……。
「このっ、いい加減に、しろよっ」
いきなり閉じていた目を開いて、睨まれた。
「うぉうっ?」
スイッチ入っちゃったか。
がばっと覆いかぶさって、むしゃぶりついてきやがった……俺の胸に。乳首に。入れたまんまのペニスが引き締まった尻肉に挟まれ、ぐいっと妙な角度に引っ張られる。
「おおおあああ、よせよせ捩れる、曲がるっ」
「っはっ、これぐらい余裕だろうが、このエロおやじ」
「コーカソイドと一緒にすんなっ! くうっ」
周囲の肌もろともがぱっとくわえ込み、噛んで潰して舌で舐められた。声を出す代わりみたいに、激しく。じゅくじゅくと、唾液の泡立つ音がする。粘つく舌が固くなった突起を執拗にねぶり、歯に押し付ける。
「こ、のっ、乳首、噛むなっ」
言ったらさらに強くなった。(予想すべきだった!)
「うぐっ」
やばい。とんがった胸の先端から、ぴりぴりと走る刺激が手足の先端まで駆け抜けて、また真ん中に戻る。
やばい。乳首が射精しそうだ。
ペニスが疼く。たまらず声が高く裏返る。
「ふっ」
奴の笑う声が震動になって伝わってくる……心臓に、直に来る。ええい、いまいましい!
「んのやろっ」
しつっこく舐められ、噛まれ、吸われた。意地でも声は上げなかったが、その程度で隠し通せるレベルじゃない。
吸い上げられるたびに、奴の中の俺がぴくんぴくん震えちまうんだから……。
「は……あぁあ」
ようやく奴が口を離し、元通り腰を落としてくれた時には正直ほっとした。涎を手の甲で拭い、ねっとりした視線で見おろしてる。
「可愛い……な、フジイ」
「っ」
常夜灯の明かりでもはっきりわかるくらいに、乳首の周りに歯形が刻まれてる。上と下に対になった弧を描いて。
「痕ついちまったろ」
「着けたんだよ」
満足げに笑ってる。ちくしょうめ、いい顔だ。
「このっ、てめぇの方こそ、きれいな色してるくせに」
「残念……だったな……っくっ」
ぷるっと身震いしながら、V.Iは胸を張った。尖った乳首が濃紺の布地にぷっくり浮ぶ。
「お前が着せてくれたコレのお陰で、隠れてる」
湯気が立ちそうなくらいに頬を紅潮させて、得意げな顔してやがる。ええ、ちくしょうめ、可愛い奴!
「見えなくたってわからぁ」
エプロンの脇から手をつっこみ、指で押してやった。
「あふっ、よせっ!」
ぴちぴちに張りつめた布でこすられてた中に、指が割り込んだんだ。そりゃあもう、すごい『圧』がかかったんだろうよ。
うつむいたまんま、歯を食いしばってがたがた震え出した。ケツの穴はぎゅうぎゅう、湿って膨らんだねとつく壁が押し寄せて、ペニスが根元から持ってかれそうなくらいに絞られる。入り口はぎっちりと、そのくせ中はねっとり柔らかく。それでいて弾力があって、きゅん、きゅん、と波打ってる。
「う、おおうっ」
やばい。これってもしかして。
「あー、あ、お、ん、あー、あーっ」
甘ったるい声出して腰振り始めやがった。もう、恥じらう余裕が無い。ただただ気持ち良くなるのに無我夢中。
「っ、ばか、そんなに締めるな、あ、やめろ、腰振るなっ、あ、ああっ」
「んんんぅう、お前こそ、でっかくしてっ、このっ、エロ親父っ」
「どっちがっ」
俺のが膨らんでるのか。彼が締めてるのか。多分両方。求め合って、欲しがって。しがみついて、受け止められて、生まれるすさまじい摩擦に思考が溶ける。
汗で湿った俺の腹と、彼の尻がぶつかりあって、ぱちん、ぱちんといい音が弾ける。
卑猥な音。
卑猥な声。
もうどうなったっていい。むしろどうにかなりたい。おかしくなりたい。
「あ、あ、あっ」
「おっ、あ、あーっ」
熱い湿った息を吐き、罵り合い喘ぎ合った揚げ句、ほぼ同時に……
「あおうっ」
「うぅんっ」
相打ち。
盛りのついた猫みたいな声を上げながら。聞きながら。ひくつく彼の中に思いっきり射精(だ)した。
紺色のエプロンがじわっと内側から濡れて。ぽとぽとと生温かい滴が垂れるのを感じていた。
「はー、はー、はぁあ……」
ぱんぱんに張りつめた性欲を一気に出しちまったか。緩み切った顔で、うっとりしてやがる。半開きにした、とろんと潤んだ目で。(あぁ、後ろでイった時の顔だ)
余韻に蕩けるメス顔を、この角度で見上げるのも、中々に新鮮。滴る汗と精液が竿を伝って根元に垂れてくる。これも中々に、新鮮。
「くくっ、くくくっ」
「何……笑ってる」
「今の君、すっごく卑猥だ」
力尽きて小刻みに震え、ぺったり伸し掛かってくる重たい体を抱き留める。汗だの涎だのそれ以外の体液で全身くまなくべとべとでぐちゅぐちゅ。
それでもこうして抱き合って、ひっついてるのが気持ちいい。液体にまみれてひっつく関係は、一度味わったら離れがたい。
頬を舐め、唇をついばんだ。角度を変えて、何度も、何度も。毛繕いをしあう猫みたいに何度も念入りに。
(ああ、こいつの味だ)
同じ物を食って、同じ物を飲んだ。だからこそ感じる彼の『味』が、一段と濃くなっていた。そのくせ馴染む。それが不思議でもあり、同時に背筋がしびれるほど嬉しい。
エプロンの紐を解き、背筋を撫でる。V.Iは目を閉じてうっすら唇を開き、甘い声で喘いだ。
「でっかい子猫だ」
「……meow」
(Fin)
十海
2015-05-16 03:11:38