ある日、北風と太陽は勝負をしていました。
旅人の服を脱がせた方が勝ちという勝負です。
「ようし、まずはオレからだ!」
北風は旅人の服を吹き飛ばそうとビュウビュウ強い風を吹きかけます。ですが旅人はむしろ寒がって、コートのひとつも脱ごうとはしません。
「今度はワタシの番ですね」
太陽がぽかぽか暖かい光を浴びせると、するとどうでしょう、旅人はコートを脱いで、暑い暑いと水筒の水を飲んでいます。
「むう、やるな太陽、だがコート一枚脱がせたくらいでデカい顔をされちゃ困る」
「おやおや、ワタシの番はまだ終わってはいませんよ」
どういう事かと北風が旅人の方を見ると、なんだか旅人は、たっぷり汗をかいて、顔も真っ赤で、ひどく苦しそうです。
「? なんだ? おい太陽、あいつの様子がおかしいぞ?」
太陽が暑くしすぎたのかと思いましたが、しかしそこへ鳥が一羽二羽、少しも苦しむ様子もなく元気に空を飛んでいきます。
おかしいのは旅人だけ。
「暑い……熱い……なんか……体が変だ……」
息も荒く、足取りもよろよろと頼りなくなっています。
「太陽お前、何をした?」
すると、太陽は言います。
「事前に旅人の水筒に強力な媚薬を仕込んでおいたのですよ。今、彼は体が疼いて熱くてたまらない筈です」
「それはお前、お前、それはズルくないか!?」
「作戦ですよ」
「反則だろ!」
作戦だ、反則だ、北風と太陽がそう言い合っている間も旅人はどんどん体が熱くなってどうしようもなくなってしまいます。
まさか自分の水筒に媚薬が仕込まれているなんて思いもしない旅人は、熱い体を冷まそうとどんどん水を飲んで、ついには水筒が空っぽになってしまいます。
「なんで……どんどん……あつく……」
コート一枚脱ぐだけじゃ駄目だ。もういっそ、服を全部脱いでしまおう。そうでもしないと、死んでしまいそうだ。と、考えた旅人。でも、頭がくらくらして指先が震えてうまく服が脱げません。それに、服が肌をちょっと擦るだけで体がじんじん疼いてたまらないのです。
「はぁん……あん……ぁあぁ……」
あまりの熱さと疼きにとうとう動けなくなった旅人は、地面にへたりと座り込みます。するとそこへ……。
「おい! そこの兄ちゃん、どうした!?」
旅人が声のする方を見ると、そこには複数の男達がいます。近くの村の住民達でした。
「具合が悪いのか?」
「見ねえ顔だな、旅の人か? 俺らの村が近くにあっから、うちに来て休むか?」
優しく声をかけてくる男達。旅人は安堵します。彼らがきっと自分を助けてくれるでしょう。
「お願い……助けてください……」
「ああ、勿論だ! 何をすりゃあいい」
「服を……脱がせて……体が熱くて……熱くて、たまらないんです……おねがい……たすけて……」
男達は動揺しました。
旅人が自分達を誘っているように見えたからです。
なんていう淫乱な旅人だろうか。でもなかなか綺麗な顔をしている。それにうっとりした目でこっちを見つめて、今すぐにでも抱いてほしいという様子じゃあないか。これを無視するのはかわいそうじゃあないか。
「おい、どうする……」
「どうするって、こんなに必死にねだられちゃあ仕方ないだろう。なあ?」
「どこでヤる? 村へ連れていくか」
「村の女達に見られたらきっとうるさいぞ」
「『具合の悪い旅人を介抱する』とでも言って誰かの家へ連れ込めばいい」
「じゃあうちの倉はどうだ? 古い倉を取り壊す予定で片付けていたんだが、そこにこいつを……」
男達の会話をぼんやりと聞きながら、「なんでもいいから早く助けてくれ」と旅人は思います。
やがて、一番体格の良い男が旅人に近付くと、その体をひょいと抱えあげました。
「んぁあ!」
男に触れられただけで、旅人は甲高く喘ぎびくびくと震えます。
「おっとっと。おい、この兄ちゃん、もう限界みたいだぞ」
「こりゃ一回抜いてやった方がいいな。ここでヤっちまうか」
「いや、この道は女達も通る。そっちの林の中でヤろう」
旅人は男に抱えられたまま、すぐ傍の雑木林の中へと連れていかれます。木々が陽射しを遮って薄暗い雑木林の中でも、体の熱には変化がなくて、旅人は不思議に思います。この熱さはてっきり陽の光のせいだと思ったのに……。
陽の光のせいというか、太陽のせいではある訳ですね。その事は、旅人も男達も知りませんが。
「反則」
「作戦」
「反則」
「作戦」
北風と太陽は、まだ言い合いを続けていました。だけど気付くと旅人の姿が見えません。あれ? どこへ行った? きょろきょろとふたりが旅人を探していると、雑木林の方から悲鳴のようなものが聞こえます。
「いやぁああぁあーっ! あぁっ、はぁん、あん、あんっ、やめ、ぁあぁーっ!」
何だろうか? 太陽は木々の隙間から様子をうかがおうとしますが、よく見えません。北風は、ビュウッと雑木林の中へ吹き入っていきます。
そして、しばらくして出てきて言います。
「太陽、お前の勝ちだ」
「どういう事ですか?」
「どうもこうもない。中では旅人も村の男達も皆裸だった。反則したとはいえ、ここまで多くの人間を素っ裸にしたお前の勝利を認めない訳にはいかねえ」
「作戦ですってば」
こうして太陽の勝利が決まった頃、雑木林の中では旅人が男達に犯されていました。北風の言ったとおり皆裸で、脱ぎ散らかされた服が地面に落ちていたり木の枝に引っかかっていたり。
そして旅人の悲鳴、いえ、嬌声。
「やめて、だめ、ぁ、あー!」
「やめてだって? 兄ちゃんが俺らを誘ったくせに、今更何言ってんだ。もう兄ちゃんの中は俺らの種でいっぱいなんだぜ、喜べよ、淫乱」
「あっ、誘って、なんかっ……! 違う……嫌だ、いや、あぁっ! やぁあぁっ!」
「俺、今まで胸のでかい女が好きだったけどさ、男の平たい胸もいいもんだな。ほれ、どうだ、乳首弄られて気持ちいいんだろう?」
「ひぅっ! うぁあ、だめ、ぁ、んんーっ! いや、やらぁっ……んぐう! んむ、えぅうっ」
「なんだよ、旅人さん下の口はイイ具合なのに上の口は下手だな。しゃぶるのは慣れてないのか? 歯ァ立てんじゃないぞ? ほら舌出せ舌」
男達は最初、旅人を一、二回イかせてあげてから村に運んでじっくり楽しむつもりでした。
ですが抱いてみるとあまりに旅人の体の具合が良すぎて、男達は彼を奪い合うように雑木林の中で代わる代わる延々とその体を弄び続けます。媚薬の効果はバツグンで、旅人はどれだけ犯され、どれだけイかされてもまだ足りないというように体は疼き、ちょっと触れられるだけでびくびく震え喘ぐのです。
媚薬の事なんて知らない男達は、淫乱な旅人だと思って、今までどれだけ男を咥えこんできたのかと考えます。
旅人は実際男に抱かれた事など一度もありませんでした。ですが今こうして抱かれてみると全身が快感に襲われ、心では嫌がっている筈なのに体は男達を喜んで受け入れていくようです。全て太陽が仕込んだ媚薬のせいです。ですけれど旅人に媚薬を飲んだ自覚はなく、もしかしたら男達の言うように自分は淫乱なのかもしれないと、そう考えてしまうのでした。
太陽が去り、月が昇る頃。
「はぁ…………はぁ…………ぁ…………」
精液にまみれた体で、旅人は地面に横たわっていました。
周囲では男達が各々服を着て、どうやら帰り支度をしています。
やっと終わったんだ、と、旅人は安堵して目を閉じました。汚れた体は、後で、川でも探して水浴びをしよう……。
疲れきった旅人は、そのまま眠ってしまいました。
そして目を覚ました時、旅人は自分が見知らぬ建物の中にいる事に気付きます。
「ああ、起きたのか兄ちゃん」
自分を抱いた男達も、そこにはいます。
「ここ、は……」
「うちの倉だよ。今は使ってねえ古い倉だ。取り壊す予定だったんだが、しばらくあんたに貸す事になった」
「そうそう。『俺達は道で倒れてる旅人さんを見かけて、村に連れてきて介抱してやろうって事になった。ちょうどこの倉が空いていたから、布団やら何やら運び入れて、旅人さんが元気になるまでここに住まわせる事にした。』……そういう話になってる」
「ついでに、『旅人さんは女が大の苦手らしいから、俺ら男が交代で世話をする』って話にもな。ほら、アンタもさ、俺らと楽しんでるところを女共に邪魔されたくもないだろ? だからこっちも考えたんだ」
「何言って……。……住まわせる……?」
「だってアンタを毎日抱くには、この村で寝泊まりしてもらうのが一番便利だろ? ま、今日はゆっくり休むといい。明日から俺らが交代でアンタを抱きに……いや、『介抱しに』きてやるからな」
それから、旅人は毎日、代わる代わる倉を訪れる男達に犯される事になるのでした。ある時はひとり、ある時はふたり、たまに全員で来て旅人の体を好き放題弄んだのです。
流石にもう、あの媚薬の効果はとっくに切れていました。
ですが、男達に散々抱かれた体は、もうすっかり犯される快感を覚えてしまっていました。心だけはそれでも男達を、毎日の激しい行為を拒絶し続けましたが、体は触れられればぞくぞくと震え、挿入されてイき、口からは喘ぎ声ばかりがこぼれていきました。
旅人が村から出られたのは、それからどれほどの月日が経った頃だったでしょう。
男達と旅人の関係が、ついに村の女にバレてしまったのです。
「うちの男共をたぶらかしたね! なんて悪女……いいや悪男だ! 出ていけ!」
自分の意思で村に来た訳でも抱かれた訳でもないのに悪者扱いは理不尽だ、とは感じたものの、逃げるチャンスだと思った旅人は言われるがまま出ていく事にしました。それは夜中の事で、月が照らす道を旅人は必死に駆けていくのでした。
今度こそ助かった、と、旅人は本当に安堵したのでした。
そんな夜の事。
空の上で、南風と月が勝負をしていました。
旅人の服を脱がせた方が勝ちという勝負を……。
旅人の服を脱がせた方が勝ちという勝負です。
「ようし、まずはオレからだ!」
北風は旅人の服を吹き飛ばそうとビュウビュウ強い風を吹きかけます。ですが旅人はむしろ寒がって、コートのひとつも脱ごうとはしません。
「今度はワタシの番ですね」
太陽がぽかぽか暖かい光を浴びせると、するとどうでしょう、旅人はコートを脱いで、暑い暑いと水筒の水を飲んでいます。
「むう、やるな太陽、だがコート一枚脱がせたくらいでデカい顔をされちゃ困る」
「おやおや、ワタシの番はまだ終わってはいませんよ」
どういう事かと北風が旅人の方を見ると、なんだか旅人は、たっぷり汗をかいて、顔も真っ赤で、ひどく苦しそうです。
「? なんだ? おい太陽、あいつの様子がおかしいぞ?」
太陽が暑くしすぎたのかと思いましたが、しかしそこへ鳥が一羽二羽、少しも苦しむ様子もなく元気に空を飛んでいきます。
おかしいのは旅人だけ。
「暑い……熱い……なんか……体が変だ……」
息も荒く、足取りもよろよろと頼りなくなっています。
「太陽お前、何をした?」
すると、太陽は言います。
「事前に旅人の水筒に強力な媚薬を仕込んでおいたのですよ。今、彼は体が疼いて熱くてたまらない筈です」
「それはお前、お前、それはズルくないか!?」
「作戦ですよ」
「反則だろ!」
作戦だ、反則だ、北風と太陽がそう言い合っている間も旅人はどんどん体が熱くなってどうしようもなくなってしまいます。
まさか自分の水筒に媚薬が仕込まれているなんて思いもしない旅人は、熱い体を冷まそうとどんどん水を飲んで、ついには水筒が空っぽになってしまいます。
「なんで……どんどん……あつく……」
コート一枚脱ぐだけじゃ駄目だ。もういっそ、服を全部脱いでしまおう。そうでもしないと、死んでしまいそうだ。と、考えた旅人。でも、頭がくらくらして指先が震えてうまく服が脱げません。それに、服が肌をちょっと擦るだけで体がじんじん疼いてたまらないのです。
「はぁん……あん……ぁあぁ……」
あまりの熱さと疼きにとうとう動けなくなった旅人は、地面にへたりと座り込みます。するとそこへ……。
「おい! そこの兄ちゃん、どうした!?」
旅人が声のする方を見ると、そこには複数の男達がいます。近くの村の住民達でした。
「具合が悪いのか?」
「見ねえ顔だな、旅の人か? 俺らの村が近くにあっから、うちに来て休むか?」
優しく声をかけてくる男達。旅人は安堵します。彼らがきっと自分を助けてくれるでしょう。
「お願い……助けてください……」
「ああ、勿論だ! 何をすりゃあいい」
「服を……脱がせて……体が熱くて……熱くて、たまらないんです……おねがい……たすけて……」
男達は動揺しました。
旅人が自分達を誘っているように見えたからです。
なんていう淫乱な旅人だろうか。でもなかなか綺麗な顔をしている。それにうっとりした目でこっちを見つめて、今すぐにでも抱いてほしいという様子じゃあないか。これを無視するのはかわいそうじゃあないか。
「おい、どうする……」
「どうするって、こんなに必死にねだられちゃあ仕方ないだろう。なあ?」
「どこでヤる? 村へ連れていくか」
「村の女達に見られたらきっとうるさいぞ」
「『具合の悪い旅人を介抱する』とでも言って誰かの家へ連れ込めばいい」
「じゃあうちの倉はどうだ? 古い倉を取り壊す予定で片付けていたんだが、そこにこいつを……」
男達の会話をぼんやりと聞きながら、「なんでもいいから早く助けてくれ」と旅人は思います。
やがて、一番体格の良い男が旅人に近付くと、その体をひょいと抱えあげました。
「んぁあ!」
男に触れられただけで、旅人は甲高く喘ぎびくびくと震えます。
「おっとっと。おい、この兄ちゃん、もう限界みたいだぞ」
「こりゃ一回抜いてやった方がいいな。ここでヤっちまうか」
「いや、この道は女達も通る。そっちの林の中でヤろう」
旅人は男に抱えられたまま、すぐ傍の雑木林の中へと連れていかれます。木々が陽射しを遮って薄暗い雑木林の中でも、体の熱には変化がなくて、旅人は不思議に思います。この熱さはてっきり陽の光のせいだと思ったのに……。
陽の光のせいというか、太陽のせいではある訳ですね。その事は、旅人も男達も知りませんが。
「反則」
「作戦」
「反則」
「作戦」
北風と太陽は、まだ言い合いを続けていました。だけど気付くと旅人の姿が見えません。あれ? どこへ行った? きょろきょろとふたりが旅人を探していると、雑木林の方から悲鳴のようなものが聞こえます。
「いやぁああぁあーっ! あぁっ、はぁん、あん、あんっ、やめ、ぁあぁーっ!」
何だろうか? 太陽は木々の隙間から様子をうかがおうとしますが、よく見えません。北風は、ビュウッと雑木林の中へ吹き入っていきます。
そして、しばらくして出てきて言います。
「太陽、お前の勝ちだ」
「どういう事ですか?」
「どうもこうもない。中では旅人も村の男達も皆裸だった。反則したとはいえ、ここまで多くの人間を素っ裸にしたお前の勝利を認めない訳にはいかねえ」
「作戦ですってば」
こうして太陽の勝利が決まった頃、雑木林の中では旅人が男達に犯されていました。北風の言ったとおり皆裸で、脱ぎ散らかされた服が地面に落ちていたり木の枝に引っかかっていたり。
そして旅人の悲鳴、いえ、嬌声。
「やめて、だめ、ぁ、あー!」
「やめてだって? 兄ちゃんが俺らを誘ったくせに、今更何言ってんだ。もう兄ちゃんの中は俺らの種でいっぱいなんだぜ、喜べよ、淫乱」
「あっ、誘って、なんかっ……! 違う……嫌だ、いや、あぁっ! やぁあぁっ!」
「俺、今まで胸のでかい女が好きだったけどさ、男の平たい胸もいいもんだな。ほれ、どうだ、乳首弄られて気持ちいいんだろう?」
「ひぅっ! うぁあ、だめ、ぁ、んんーっ! いや、やらぁっ……んぐう! んむ、えぅうっ」
「なんだよ、旅人さん下の口はイイ具合なのに上の口は下手だな。しゃぶるのは慣れてないのか? 歯ァ立てんじゃないぞ? ほら舌出せ舌」
男達は最初、旅人を一、二回イかせてあげてから村に運んでじっくり楽しむつもりでした。
ですが抱いてみるとあまりに旅人の体の具合が良すぎて、男達は彼を奪い合うように雑木林の中で代わる代わる延々とその体を弄び続けます。媚薬の効果はバツグンで、旅人はどれだけ犯され、どれだけイかされてもまだ足りないというように体は疼き、ちょっと触れられるだけでびくびく震え喘ぐのです。
媚薬の事なんて知らない男達は、淫乱な旅人だと思って、今までどれだけ男を咥えこんできたのかと考えます。
旅人は実際男に抱かれた事など一度もありませんでした。ですが今こうして抱かれてみると全身が快感に襲われ、心では嫌がっている筈なのに体は男達を喜んで受け入れていくようです。全て太陽が仕込んだ媚薬のせいです。ですけれど旅人に媚薬を飲んだ自覚はなく、もしかしたら男達の言うように自分は淫乱なのかもしれないと、そう考えてしまうのでした。
太陽が去り、月が昇る頃。
「はぁ…………はぁ…………ぁ…………」
精液にまみれた体で、旅人は地面に横たわっていました。
周囲では男達が各々服を着て、どうやら帰り支度をしています。
やっと終わったんだ、と、旅人は安堵して目を閉じました。汚れた体は、後で、川でも探して水浴びをしよう……。
疲れきった旅人は、そのまま眠ってしまいました。
そして目を覚ました時、旅人は自分が見知らぬ建物の中にいる事に気付きます。
「ああ、起きたのか兄ちゃん」
自分を抱いた男達も、そこにはいます。
「ここ、は……」
「うちの倉だよ。今は使ってねえ古い倉だ。取り壊す予定だったんだが、しばらくあんたに貸す事になった」
「そうそう。『俺達は道で倒れてる旅人さんを見かけて、村に連れてきて介抱してやろうって事になった。ちょうどこの倉が空いていたから、布団やら何やら運び入れて、旅人さんが元気になるまでここに住まわせる事にした。』……そういう話になってる」
「ついでに、『旅人さんは女が大の苦手らしいから、俺ら男が交代で世話をする』って話にもな。ほら、アンタもさ、俺らと楽しんでるところを女共に邪魔されたくもないだろ? だからこっちも考えたんだ」
「何言って……。……住まわせる……?」
「だってアンタを毎日抱くには、この村で寝泊まりしてもらうのが一番便利だろ? ま、今日はゆっくり休むといい。明日から俺らが交代でアンタを抱きに……いや、『介抱しに』きてやるからな」
それから、旅人は毎日、代わる代わる倉を訪れる男達に犯される事になるのでした。ある時はひとり、ある時はふたり、たまに全員で来て旅人の体を好き放題弄んだのです。
流石にもう、あの媚薬の効果はとっくに切れていました。
ですが、男達に散々抱かれた体は、もうすっかり犯される快感を覚えてしまっていました。心だけはそれでも男達を、毎日の激しい行為を拒絶し続けましたが、体は触れられればぞくぞくと震え、挿入されてイき、口からは喘ぎ声ばかりがこぼれていきました。
旅人が村から出られたのは、それからどれほどの月日が経った頃だったでしょう。
男達と旅人の関係が、ついに村の女にバレてしまったのです。
「うちの男共をたぶらかしたね! なんて悪女……いいや悪男だ! 出ていけ!」
自分の意思で村に来た訳でも抱かれた訳でもないのに悪者扱いは理不尽だ、とは感じたものの、逃げるチャンスだと思った旅人は言われるがまま出ていく事にしました。それは夜中の事で、月が照らす道を旅人は必死に駆けていくのでした。
今度こそ助かった、と、旅人は本当に安堵したのでした。
そんな夜の事。
空の上で、南風と月が勝負をしていました。
旅人の服を脱がせた方が勝ちという勝負を……。
名無しのマンティス
2022-06-03 12:45:41